20161001

無題

 金木犀は、木星みたいだし、金星みたいでもある。でも犀という字は、動物のサイの意味で、それでいてあんなに甘い匂いがするなんて、変なの。可愛くて懐かしい香りを思い切り吸い込むと、胸がいっぱいになる。金木犀の香りを点々と辿りながら、住宅地を歩いた。一年中咲いていたらいいのに。
 
 世界の大部分は、清らかで正しいものだとずっと思っていたけれど、それはただ単に自分と深く関わる人たちが、素直で偽りないという、ほんの小さな一部分で、ほんとうの世界の大部分は、どうやら酷いものらしい。でも嘘をついている、とか、騙している、とか、悪いことをしている、とか、そういう意識もないらしい。大人になると多くの人は、なんのためらいもなく嘘をつくようになる。そんな自分さえも正当化する。
 世界に抗って、正直でい続けることは、ひどく苦しくて、痛い。だからみんな楽な方に流されて、仕方ない、とか、必要だ、とか言って、なんとなく世界に従う。
 ひどく苦しくて、痛くても、抗って抗って正直でいたい。何が正しいとか何が間違っているとかは、人の価値観によってまるで違うから判断できないけれど、でも絶対に、正直は美しい。だから何にも染まらずに、強い気持ちを持ち続けたい。
 
 世の中に希望がなくても、自分の中に希望があればいいし、世界が真っ暗でも、自分が発光すればいい。

No comments:

Post a Comment